蒼月夜

 軽業師・蒼と立女形桜井京奴は十六夜の月を眺めていた。
この地での興行も大流行の内に終わり、明日は江戸へ行こ
うかという段取りである。
 二人の指は誰憚ることなく絡み合い、口を吸いあわぬの
が不思議な程である。実際二人が肌を合わせた仲だという
のは座頭の神代宗太夫はとうに知っており、強力の栗山熊
春も今は諦め、躯の熱りを座頭の相手で晴らしていた。
 
 「好い月だねぇ」
 「本当に」
 それ以上に姐さんは綺麗でさぁ、と蒼は独りごちる。元
から透き通った肌は月の光を浴びて更に透き通り、唇は紅
を落としてもなお紅い。
 「ほんに、あちきは果報者だねぇ」
 「え?」
 「欲しがってくれる人と居られる…これ程の果報があろ
うかね。…初めてだよ、肌を重ねた相手にここまで安らげ
るのは」
 「姐さん…」
 「今欲しがっちゃ、いけないかえ?」
 「おいらも、欲しい…」
 影が、重なって行った。

 蒼の手が京奴の着物の裾を割る。元より女物の着物だ。
下帯なぞ在ろう筈は無い。月光の下、顔貌に似合わぬ雄雄
しい柱が露になった。
 「綺麗、だ…」
 少しの躊躇い。そして、味わうように口に含む。
 「蒼…お前のもおくれな…」
 蒼の着物の裾から首を入れ、下帯を口で解いてゆく。そ
うこうする間に息があらぬ所へ掛かり、それだけで蒼は気
を遣りそうになる。
 でも今宵はそれだけではなかった。
 口で蒼を含みながら、指が後を彷徨っていた。

 「姐…さん?」
 「全部欲しくなる…ってのは贅沢かねぇ?自分が男だっ
て事は忘れていたつもりだったけど…お前相手になら、っ
て思っちまった。…嫌かえ?」
 「姐さん相手ならね…優しくして下さいよ」
 道化た口調だったが、眼差しは真剣だった。

 お互い、着物を着たまま隠し所を露にして戯れる。蒼の
息は今もう初めての快楽に絶え絶えになっていた。髪結い
の椿油に濡れた京奴の指が蒼の中で二本三本と蠢いていた
から。蒼の口の端からは涎が我知らず垂れ、眼差しは虚空
を彷徨っている。
 「…解れたね…好いかえ?」
 「来て下さいよ…姐さん…生殺しでさぁ…」
 京奴は、膝を進めた。
 「…蒼…ッふっ…あまり締め上げないでおくれな…」
 「…初めての軽業とおな…じ…ッ!自分じゃ…加減でき
ません・・やっ…」
 二人の息は混ざり合い、腰の動きは一層激しくなる。

 そして二人は同時に果てた。
 空からは蒼い月が見下ろし、夏の名残の風が一吹き。
《コメント》
時代劇第2弾は早くも逆転となりました^^;
domonnさんからのリクエストなんですよね。
こういう設定の時は台詞回しを考えるのが愉しいです。
我ながら…実写で見たいよな、コレ。

ほむらしのびて


                                   
さくらはらはら

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