家族’-ao-      

 其の夜、夢の中に幾度となく出て来たのは京介の「夜
の表情」だった。快楽に溺れている様で、決して溺れて
いない。余りにも純粋な表情だった。

 ぼくが京介と「関係」を持ち始めたのは、この向丘の
マンションで一人暮らしを始めた頃。ほんの些細なきっ
かけからだった。
 最初は、じゃれ合いの延長のキス。
 それから、長めの抱擁。そして、お互いの愛撫。
 愛撫の時点で京介の手管に填まったかな、とチラと思
った。と、同時に安心もしていた。これで京介を独占で
きる、ってね。
 でも、それは思い違い。
 身体を重ねる事イコール心を重ねる事じゃないって現
実を、ぼくは身をもって思い知る。
 誘って、ぼくを飲み込んだのは京介。ぼくは只快楽に
弄ばれて、そして眠ってしまうだけ。
 与えられる快楽さえ持て余して、却って京介が見えな
くなってしまう時すらあった。
 だから、天沼家の一件が終わって最初のマンションで
の夜、ぼくが誘いかけて、彼を飲み込んだ。感情の変化
は百も承知した上で。

 神代先生と京介は、多分誰が見たって親子に見える。
 ぼくと神代先生は、(先生は不本意だろうけど)、孫
と其の祖父、って感じかな。先生は親子だって言い張っ
てるけど。
 じゃ、ぼくと京介は、どう映るんだろう。
 親子?兄弟?それとも、恋人同士?
 多分どれでもない。どう言う風に言えばいいのか判ら
ないけれど「家族」なんだって、思ってた。例え肉体関
係があっても、それは変わらないと思い込みたかった。
 今朝、神代先生とキスする京介を見るまでは。

 京介は、殺意を覚えてしまう程に何も変わらない。だ
から余計苦しくなる。
 京介はどんな気持ちでぼくと「関係」を持ったのか。
其の先を知るのがいつも恐かった。もしもそれが只欲望
を満たす為だけの行為だとしたら、相手はぼくでなくて
も良いって訳だ。感情も一切要らない。只、躯があれば
それでいい。
 でも、其の相手が神代先生だったって言うのは…正直
堪えたな。京介と先生って、そう言う関係になって欲し
く無いし、なる筈が無いって思い込んでたから。
 ……恐いな。
 今の感情、てんでぼくらしくない。
 あは、これが「独占欲」や「嫉妬」って言う奴か。
 こんな状況で判るのが、物凄く悲しいね。

 深春が蒼の部屋を訪れたのは其の翌朝の事だった。別
に意図があった訳ではない。只、何気なく、だ。
 「煮詰まってないか?大分」
 「グチャグチャ。……上がってよ」
 促されて部屋に入ったものの、まず籠もった臭気に圧
倒される。どう考えてもこれは……。随分独りで戯れて
いたらしい。
 「とりあえず、窓、開けるぞ」
 「そんなにひどい?」
 「覚えてないのか?」
 「無意識、なんだろうね」
 唇は微笑んでいるが、眼差しは余りに虚ろだ。
 「違ってたらスマン。京介の、事か?」
 「知ってた、の?」
 「知らざるを得なかった、と言うべきかな」
 ふっ、と短く溜息を吐く。
 「何時だったか、キスの現場を見ちまった事もあるし
……。俺も、立場同じだしな」
 「深春、も?」
 「ああ。もし……いま、其の気になれたら相手、する
ぜ?」
 「今、から?」
 「躯を動かした方が、頭、空に出来るしな。身代わり
はお互い様。後腐れ無い相手と快感だけ追い掛けりゃ、
何か糸口が掴めるかも知れんだろ?」
 そうだね。甘えてしまおう。

 もう一度、部屋を締め切って只快楽だけを貪った。深
春に貫かれて、深春を抱いて、お互いを貪って。こんな
思考停止の方法もあるんだなって、頭の片隅で冷静に考
えている自分に呆れながら、眠った。
《コメント》
本当に濃厚になってきましたね^^;
こういう蒼を見たくないと言う向きも
おありでしょうが、思春期ですしね…
肉体と精神を別に考えてやってください。
そして、バトンは深春へと渡ります。

家族’-miharu-



家族’-sou-

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