AFFAIR-家族’before-

 熱った若い肢体が俺の上で、俺の中で暴れている。あ
の時以来もう味わう事は無いだろうと思っていた感覚を、
おれは幾度と無く最近味わっている。その所為でだろう
か?嫌になる程克明に思い出してしまった。
 相手も俺のそんな変化に気付いたらしい。射ち込む動
きを止めて瞳を覗き込んでくる。
 「先生?」
 「ああ、済まん。気ィ、殺がれちまったか?」
 「持久力保持の為には良いけどね。後悔じゃ、無いよ
ね?」
 心配そうに人懐こい猫の様な瞳が覗く。蒼、そんな目
をするんじゃない。理性を忘れるだろうが!
 「何、ちと思い出してだだけだ」
 「誰の事?」
 「アントネッラの親父だった奴。俺が初めて寝た男」
 「初めて…って。じゃ20年前の体験って…?」
 「驚ェただろ?俺も未だに信じらんねぇ」
 腹這いになって枕元のエビアンを一口。そう、信じら
れないが、体験が在った事は事実だ。嫌悪感も感じなか
った。
 「どんな人だったの?」
 「今思えば京介をもう少し爽やかにした様な感じだっ
たかな。不思議な雰囲気の奴だった」
 そう、不思議な男だった。きっかけだってあいつの不
意の一言だったからな…。

 「宗、泳いで見ないか?」
 G.Cが唐突に俺に声をかける。時間は夜中の2時、
場所は運河の側の居酒屋の門前だ。
 「G.C、俺達が今居る場所を考えてみろよ。明日、
彼女を誘って行けば良いじゃねェか?…もうそろそろ駆
け落ちのつもりなんだろう?」
 「君にも随分世話になったな」
 G.Cはそう言って柔らかく笑いかける。日本の男に
しては随分整った顔立ちだ。髪の色が変われば其の侭所
謂外人としても充分通用する。尤も彼女…イタリア貴族
の娘さんだが…は其処に惹かれた、と言う訳じゃあるま
い。
 「でも、今泳ぎたくなった。君とね」
 「けっ。なに言ってやがる」
 「いいじゃないか。バイロンだってやった事らしいし」
 「…服、脱ぐのかよ?」
 「ここなら僕の下宿まで歩いてそんなにかからない。
帰りに寄り給えよ」
 言い出したら聞かない男だ…。

 「案の定、だったよな。目ェ付けられても俺は責任も
たねぇぞ!」
 「学生の悪戯で大目に見てくれるさ。ほら、タオル。
服は其処の籠に」
 濡れた服を手早く纏めて籠に入れる。下着をどうしよ
うかと一瞬躊躇ったが、潔く脱いで一緒に籠へ。一緒に
居るのは同じ持ち物を持った野郎だ。変に恥ずかしがる
事も、無いか。
 G.Cも濡れた服を脱いでタオル一枚の裸になってい
る。なんとなく服を着るのが面倒になった。彼の方も、
そうらしい。
 明りと言っても月明かりだけ。其の中で見るG.Cは、
男相手にこう言うのは変だが、綺麗だった。性別を超え
て、綺麗だった。
 其の内に、体に、特に下半身に変化が生じてきた。思
わず自問自答。
 「君だけじゃ、無いんだけどな」
 G.Cも照れ臭そうに言って、タオルを外す。彼が男だ
と改めて確認して、それでも抵抗を試みる。
 「今寝たとしても、多分今夜だけだぞ。それで良いの
かよ?」
 「肌を合わせるのが嫌ならお互いを見たまま一人で愉
しめば良いだけの事さ。…名残の為、といったら、迷惑
かい?」
 月光を浴びて、天使めいた雰囲気を纏った男は誘いか
ける。欲の欠片も無いまま。
 結局俺は誘惑に負け…一夜の宴が始まった。

 「其の一晩だけだったの?」
 「ああ。あいつも俺も他人と肌を重ねたのはそれが最
初だ。多分な」
 「正真正銘初めての人、だったンだ」
 「そう、だな」
 
 初めての人、か。確かにな。
 でもあいつが今も生きていたとしたら…とふと思う。
関係はどうなっていただろうか?
 止そう。すべては過ぎた事だ。
 今は目の前に居る家族みたいな連中が、俺の全てだ。
 だから、蒼に笑いかける。
 「半端なままで終わっていいのかよ。続けな」
《コメント》
神代先生、青春の1頁であります(苦笑)
作者としては最後の一言で自爆してしまいましたけどね。
欲望って…一度味を覚えると怖いものです(核爆)



家族’-sou-

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