ここにいるよ

「大丈夫か?」ひんやりした手が僕の額にそっと置か
れた。あっ 気持ちいい〜
「全然平気。もう起きる!」元気良く布団から飛び出
そうとしたら肩を押さえられまた布団の中に逆戻り。
「だめだよ。熱が38度もあるのに。」
「もう寝てるの飽きたよお。」甘えてみたけど首を横
に振る京介。。。

風邪をひいて寝込んだ先生と深春の看病をして見事に
治してあげたのは僕。
なのに今度は僕自身が風邪をひいて寝込むなんて!!
なんか世の中不公平な気がするんだけど。。。

でもねえ、本当のこというと少し嬉しいんだ。
だって京介がずっとそばにいてくれるから。
うとうとして目覚めるといつも横には京介がいる。
汗をふいてくれて、おかゆを食べさせてくれて、僕が
退屈しないように絵本を読んでくれるから。
先生も僕においしいアイスクリームを買ってきてくれ
るし、バイトが忙しい深春は身代わりにって大きな熊
のぬいぐるみをくれたんだ。
今僕の隣で一緒に寝てる熊がそれ。
大きくて暖かいとこが深春そっくり。

ずっとこのままだといいな。。
そう、このまま甘えていられたら。。。
なんて、そんなこと出来る訳ないってことは知ってる
んだよ。僕だって。
いつまでも子供じゃあいけない。
ううん 僕は早く大人になりたいんだ。
大人になればもし自分の大事な人達がなにか困った時
とか、病気で苦しい時に僕でも助けてあげる事が出来
るかもしれないからね。
大事な人のために何かが出来る、そんな人に僕はなり
たいんだけど。無理かなあ??

「蒼 難しい顔して何考えてるの。」京介の顔が僕を
覗き込む。
「あまり悩まないで。ゆっくり大人になればいい。」
えっ どうして僕の考えていることが判るの?
「蒼は自分のペースで大人になればいい。僕も深春も
先生も待っているからね。さあ お休み。」

僕はその日夢を見た。
明るい野原に京介と深春と先生が立っている。
僕が走っていくけど3人はどんどん歩いていく。
でもたまに立ち止まって振り返ってくれるんだ。
ここにいるよ、待っているよ。だからあせらずに君の
ペースでくればいいんだよ。
3人は歩く、で、僕は走る。
段々その距離が縮まっていく。。。
あと少し、あと少しで手が届くんだ。
笑いながら僕は3人にこう言うんだ。
「やっと僕も追い付いたよ。」
3人も振り返って笑いながらこう言ってくれた。
「いつだって蒼は一緒じゃないか。今までもこれから
だってずっと。。。」
《コメント》
しみじみ風邪引き3部作(?)これにて完、です。
読んでいてほっとしますよね、のりぞおさんのしみじみって。
これでさくやさんに絵本の仕事を振ってしまいそうな
イケナイ管理人もいるんですが。求む!絵本化担当!
(こんな時「自分で描けたらなぁ」と思うのです)



熊とナース

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