君のいる場所
風邪を引いて熱を出して寝込むなぞ何年ぶりのことだ ろうか。 昨晩外で酒を飲み、コートを店に忘れて寒さに酔いも 覚めちまい、震えながら帰宅したのが原因だろうな。 俺も年をとったもんだぜ。 おかげで延々と今朝は京介の小言をくらっちまった。 しかし、静かなもんだ。 京介も熊も学校か。やれ もう少し眠るとするか。 少しうとうとしたが、額の濡れた感触で目が覚めた。 どうやら濡れタオルらしい。 しかしよく絞っていないからべちゃべちゃだ。 目を開けると心配そうに覗きこむ小さな顔。 「蒼じゃないか。京介ともう帰ってきたのか。」 「京介は学校。深春も学校。」 「どうしたんだ。おまえ1人にしてあいつらは。。」 「僕が残るって言ったの。だって先生病気だもん。」 「蒼・・・」 にこりと笑うと蒼は傍らにあった袋を差し出した。 「先生 アイス。」 「はっ? アイス?」 甘い物の食べ過ぎは身体に良くないと京介はお菓子の 買い置きなぞしないはず。 「京介におこづかい貰ったから買ってきたの。」 「まさか おまえ1人で買いに行ったのか?」 「うん お店のおばちゃんに『これ下さい』って。」 目頭がジーンと熱くなった。 蒼はいまだに京介にべったりくっついていないとだめ だと思っていたのになあ。 いつのまにか成長していたんだ。。。 「ありがとうよ 蒼。」 「先生 早く良くなってね。」 「蒼の買ってきてくれたアイスがあるからな。」 「僕 隣の部屋で本読んでるからね。」 自分がいると俺が食べづらいと思ったのか蒼は部屋を 出ていった。 「いい子に育ったなあ。。」 年を取ったなんて言ってられるか。 そう こんな俺を慕ってくれる奴らのためにも年なぞ 取ってる暇があるかってんだ。 「先生。。。」 「うん なんだ 蒼」 「先生、『鬼のかくらん』って何?」 「えっ??」 「深春が言ってたの。先生は『鬼のかくらん』って。 鬼はらんに何を書くの?」 「オイオイ・・・」 あの熊め! 風邪が治ったらぎゃふんと言わせてやるからな! 首根っこ洗って待ってろってんだあ 全く。。。
《コメント》 照れた添え書きとともに貰った、風邪引きさん教授。 蒼の純真さが引き立つ作品です。 あ、又さくやさんに日記発注しようかしら。