揺らめく想い

                     気持ちは言わなくちゃ伝わらない、って
                    教えてくれたのは師匠。
                     でも、伝えて良いんだろうか?
                     相手に拒まれたら、この気持ちは何処へ
                    行っちゃうんだろう。

                     「リベザル、ユノ、先に風呂、入っちゃ
                    いな?」
                     「良いんですか?」
                     「んー。今日はお子様優先」
                     何なんだろ?首をかしげながら柚之助と
                    一緒にお風呂場に行く。28日から数えて
                    ゴールデンウィーク8日目、明日はこの山
                    荘から久我山へ帰るって晩の事。
                     「あ!菖蒲湯だ!」
                     「何?」
                     「リベの国にはないんだっけ?ほら、今
                    日は…」
                     「そっか、子供の日…」
                     「昔は端午の節句って言って、子供は菖
                    蒲を入れたお風呂に入ったもんなんだって」
                     「何でだろ?」
                     「厄除けの為って聞いた事あったけど」
                     「…俺達が入っていいのかな?」
                     「ボクもリベも悪さしないから良いんじ
                    ゃない?」
                     言いつつ廊下で兄貴とすれ違う。
                     「いい湯加減になってるよ。風呂上りに
                    は柏餅も作ってあるからね」
                     「ホントですか!」
                     「白と緑と造ってあるから。さっぱりし
                    ておいで」
                     「はぁい」
                     声を揃えて返事をする俺達。それに笑顔
                    で応えてくれる兄貴。でも、一寸落ち着か
                    ない俺。自分の気持ちが判ってるだけに。

                     今年は本当に骨休みしよう!と師匠が言
                    い出して決まったゴールデンウィーク中の
                    山荘借り切り。此処の持ち主は兄貴の義理
                    のお父さんだそう。
                     で、3人で借りるのも広すぎるって事で
                    師匠が目をつけたのが桜庭さんと柚之助。
                    桜庭さん、一寸可哀想。此処へ来ても夜な
                    べしてお仕事してるもの。師匠は其れを邪
                    魔して愉しんでるし。
                     俺と柚之助は結構自由に遊ばせて貰って
                    る。兄貴に手伝いましょうか、って言った
                    んだけど、
                     「二人の故郷に似た場所だから、愉しん
                    できなさい」と言われちゃった。だから二
                    人で確り遊んだ。自分の気持ちに目隠しし
                    たいのもあって。
                     どうしよう。俺、柚之助が好きだ。師匠
                    が兄貴や桜庭さんを好きなのと同じ様に。
                     多分其れは俺達が妖怪だったとしても間
                    違いかも知れない。でも、好きだ。
                     こう言う時は、まだ子供にしかなれない
                    自分の身体に感謝する。この身体なら、突
                    っ走って気まずくなる事も無いだろうし。
                     柚之助に、嫌な思い、させたくないもん。

                     兄貴の言うとおり、本当にいい湯加減だ
                    った。少しぬるぬるしてるけど。
                     「初めて入った。…これが菖蒲湯?」
                     「ボクも10年振り位かな、入ったの」
                     「ふうん」
                     「でね」
                     浮かんでいた束から1本葉を抜き取って、
                    俺の頭に鉢巻を造ってくれる。
                     「こうすると頭が良くなるんだって。リ
                    ベの書き取りが早く上達します様に!」
                     「ひっどおい!柚之助、最近師匠に似て
                    きてない?」
                     「そんな事無いよ。ボクにも結んで?」
                     「うん…」
                     湯船につかったまま、俺も鉢巻を造って
                    あげる。これでも結構ドキドキする。透明
                    じゃないお湯にも感謝!だって……だもん。
                     「もう1箇所、結んであげる」
                     でも手は浮かび上がってこない。
                     ?…!
                     結び付けられたのは、もう一人の俺。
                     「一人で悩んでたの?」
                     「柚之助?」
                     「ユノ、って呼んで?」
                     抱きつかれて、体全体で感じる。柚之助
                    も、又。
                     「好きだよ、ボクも」
                     「ユ…ノ…」
                     「好きになったんだから、仕方ないじゃ
                    ない」
                     「そう、かな?」
                     「多分。ねぇ、桜庭さん達みたいに、や
                    ってみない?」
                     「…あ、判るよね。一緒に暮らしてるし」
                     「まだ本当に気持ち良くなれるか判らな
                    いけど」
                     「充分…気持ち良いよ…」
                     恥かしいけど、言っちゃおう。 
                     「ユノとこうしてるだけでも、俺、充分
                    気持ち良いから」

                     「使うまでも無かったな、これ」
                     秋の手の中で踊っているのは小さなコル
                    ク栓の瓶。
                     「どう言った効能書きなんだ?」
                     零一の問いに無邪気に微笑む。
                     「一時的に成長を促進するんだ。まあ、
                    1時間もすれば元に戻るよ。一寸匂いある
                    けど、菖蒲で誤魔化せると思ってたし」
                     「結構親馬鹿なんだな?」
                     「莫迦な弟子ほど可愛いんだ。ゼロイチ
                    だって安心したろ?」
                     「安心しあうのは良いんですが」
                     咳払いと共に座木の御託宣。
                     「私も居ると言う事をお忘れなく。それ
                    に子供達もそろそろ上がってきますから…
                    続きは今夜寝室で」
                     「座木も当然混ざるよな?」
                     「子供達も今夜は一緒でしょうし」
                     
                     こうして、黄金週間は終わりを告げよう
                    としていた。


                     《コメント》
                      御免なさい、出来心なんです!
                      発想の原点はのりぞおさんのお風呂
                      シリーズです。あー、秋ちゃんが薬
                      使わなくて良かった。だったらもろ
                      に被ってました。
                      暈しまくりだけど…萌えます?

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