ごちゃまぜバレンタインデー

「遅い。どこへ行ったんだ蒼は。」京介はそうつぶや
くと壁の時計を見た。もう6時を過ぎている。
冬の6時は日も落ち外は暗いし寒い。
こんなに帰宅が遅くなったことは今までなかった。
誘拐、事件、変質者、いけないとは思うがつい発想が
ダークな方向に向かってしまう。

玄関で物音がした。
慌てて玄関へ行くと走ってきたらしく息をきらした蒼
がいた。
「蒼、こんな遅くまでどこへ行っていたの。」
つい声が詰問調になってしまう。
「・・・・ ゴメンナサイ。」小さい声の蒼。
うつむいてしまったその姿を見て京介は『少し叱りす
ぎたかな』と反省した。
蒼の手を握ろうとしたら何か包みを持っている。
「蒼 これは何?」優しい口調で問いただす。
「あのねえ、僕。。。」
「おまえら 何してんの?」帰宅した深春は玄関先で
立ち尽くす2人を見てあきれた声。
「寒いだろうが。話なら部屋でしようぜ。ほら」

蒼は一旦自分と京介が寝起きしている部屋へ入り、何
やら取りに行った模様。
事態がよく判らない京介と深春は蒼の戻るのを居間で
待っていた。
そこへ戻ってきた蒼は2人に何かを差し出して叫ぶ。
「あのねえ、バレンタインおめでとう。」
「・・・・・???」
「あれ、じゃあメリーバレンタイン!」
「・・・ 何だ それは?」
「えっ これも違うの?」
首をかしげながら蒼は盾ウな包みを2人に渡す。
どうやら蒼が自分でつくったらしい靴下型の袋に入っ
た小さな物。
京介の包みはブルー、そして深春の包みはグリーン。
包みの中から出てきたのはチョコレート。

「まさか これはバレンタインチョコか??」
「うん そうだよ。」
その日の昼間、いつものように京介と大学の神代先生
の部屋にいた蒼に事務の女性がチョコレートをくれた
のがそもそものはじまり。
今日は好きな人にチョコレートをあげる日だと聞いた
蒼はわざわざその人に聞いたチョコレート専門店まで
チョコレートを買いに行き帰りが遅くなったという。

「おい 蒼。バレンタインはなあ」深春が説明しよう
としたが京介がそれを目で止めた。
「そうか ありがとうね蒼。事情も知らないで帰りが
遅いと怒ってごめんね。」京介はそう言うと蒼の頭を
撫でた。
「京介のチョコは甘くないのにしたよ。深春のは普通
で先生のはとても甘いチョコなんだ。」
「そっか。。。でこの袋は何で靴下の形なんだ?」
「本当はみんなが寝ている枕元に置くんだよね。でも
僕そんなに遅くまで起きていられないし。」
蒼の無邪気な説明に深春は苦笑い。
「あっ 忘れた!」蒼がポケットから出したもの。
それは。。。。
「蒼 それは何だ??」深春が尋ねる。
「お願いを書いた紙。これを庭の木に吊すんだ。そう
するとお願いが叶うの。」
(蒼よ、それは七夕だろうが)心の中で蒼にツッコミ
を入れるが口には出来ない。
蒼の気持ちがうれしくて涙をこらえるのがやっと。

3人で庭に出て木に短冊もどきを吊した。
それに書かれた言葉。
『京介と先生と深春と僕がずっと一緒でいられますよ
うに』
《コメント》
歳時記シリーズ新作として頂きました。
蒼の健気さにホロリ。
でも、少年はいつか大人になってゆくんですね。

Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!