釦「随分と、おもてになる事だね」 「…」 「まあ、それでも一組残っているから、よしと しようか。…シャツ、貸して」 再び釦が揃った学ランを差し出しながら彼がせ っつく。 「素肌に、学ラン?」 「下着を着てない蒼が悪い!ほら、早く!」 お気持ち有難いんだけど…ま、いいか。 ぼくの高校卒業の日、保護者として来てくれた のは京介だった。深春は折悪しく長期のバイト。 先生も大学の関係で忙しく…京介だけが暇だった。 多分京介…無理矢理暇にしてくれたんだろうな。 そう思うと妙に優越感。仮令長くて半日程度でも 彼を独り占めできる事への。 ぼく達は「家族」。無論血縁関係は無い。肉体 関係は大いにあるけどね。だから、誰が誰を独占 するって感覚は普段余り無い。 でも、ぼくにとっては京介は親でもあって、初 めての人だったから…つい、独占したくなる。 京介はそうでもない…事は無い。現に今でも不 機嫌だしさ。 良かった。第二釦両方とも先に隠しておいて。 それでも、 『どの釦でも良いから!』 と言われて上の方の釦と言う釦は全て没収され てしまったもんなぁ。…ぼくが京介の立場でも、 多分嫌味の一つは言ったかも。 「でも良く制服の予備釦揃えてたね」 「良く見て御覧?」 れ?何か古い?…え?これって? 「僕の制服の釦を外してきた。多分こうなるだ ろうなと思って」 「でもそれじゃ京介の制服…」 「良いんだ。寧ろ、こうしたかったから」 ? きょとんとするぼくに、悪戯っぽく微笑みかけ る。 「僕にだって独占欲はある。仮令制服でも、蒼 だからね。縛る事が出来るなら…って、思うさ」 そして、キス。ついばむ様に1回。そして…一 寸!首筋の唇はまだいいけどさ、胸を弄ってるこ の手は何? 「色っぽく育った蒼が悪い!」 「育てたのは京介でしょ?」 「でもこんな誘う様な感じは教えなかった」 「それは…京介が欲しくて…」 「利害一致だな。僕も蒼が欲しい。出来れば今 すぐ」 「…待てない?」 「待ちたくない」 ぼくだってそうだけど…欲しいけど…。 ふと思いついて、死守した学ランの第二釦を外 して口に含み、京介に口づける。二人の舌の合間 を転がる釦。…なんか、思ったよりもイイ感じ。 「どう?」 「…合格。そのまま唇で愛して欲しいと言った ら、怒る?」 「メインは、帰り際にね?」 「一応、部屋を押えて置いたから」 ならいいや。 そしてぼくは、彼のズボンのジッパーに手を伸 ばした。 《コメント》 我ながらあざとい(苦笑)嫉妬する攻京介。 卒業式の第2釦…あれ、何時からの風習 なんでしょうね? 釦を遣って…こう言う風に考えるのが精 一杯でした。 |