MILKDOLL目覚めた時、枕元には500mlの紙パック 牛乳が鎮座ましましていた。 「………マジ?」 呆然と呟くぼくにパートナーは冷静に告げる。 「それとも下からいくか?」 「…遠慮しとく」 「一服盛ろうかとも思ったんだけどな」 ……パートナー教育、間違ったかも知れない。 ぼくが先導する様な形で始まったカゲリとの 「関係」。まあ、友達関係の延長線上だからお互 いのある程度の弱みってのは握ってる訳で。 この500mlの牛乳もカゲリに握られちゃっ た弱みの一つ。今にしてみればカルシウムだけ取 れば良いって事で、市販の錠剤にすれば手軽だし、 こう言う形で利用される事も無かったんだろうな、 と思う。 まあ、カゲリにしたって何時も綺麗にしてくれ ているから、礼儀としてはぼくも…って事だけど …如何も他人よりお腹弱いんだよね、ぼく。 お昼飲む時には、温めて蜂蜜混ぜよう。冷たい ままで飲んだよりもまだ穏やかだった気がするし。 「何か、やつれてない?カズミ」 「……お陰様でね。もうすっかり」 「落ち着いてるか。音も鳴ってないし」 「……バカ……」 久し振りのリードだからって、意地悪くなって ない?ま、人の事は言えないけどさ。 「…………」 「何いきなり思い出し笑いしてる訳?」 「ククッ…。いやさ、アレの事ミルクつったり 言うだろ?」 「後、もう一つ言い方あるよね」 「原液に喩えてな。いや、カズミの表情思い出 したら満更悪い喩えでもないかな、と」 「だって臭いなんて思い切り違うでしょ?」 「でも、薬ってつもりなら飲めるかな、と」 「……悪趣味だなァ」 「人の体をこう言う風に仕込んだ奴にゃ言われ たくねェよ」 あ、かなり濡れてる。にしては、 「余裕、あるじゃん」 「外じゃな。カズミの中じゃすぐだと思う」 あ……ぼくも悪趣味な連想、してしまった。 「今度はカズミかよ?言ってみな。聞いてやっ から」 「原液って感じならコンデンスミルクも有りか な、って…」 「カズミの、濃いもんな」 「……っちょっ……、動かし方、はげし…ィっ …」 「先ず大人しくして貰わないとな。逆転された らたまんねぇ」 「……ぅんっ……ンン…」 「イっちゃえよ、蒼」 低い声で耳元で不意にこの名前で呼ばれて…も う駄目。初めてカゲリの指遣いでイってしまった。 「狡いよ」 「そうか?だって、俺が知らない所でカズミが こんな修行積んでたかと思うとさ、ちっとね…」 「妬ける?」 「結構ね。……やっぱ濃いよな」 「見せて」 一人で此処暫くしてないから、自分のを見る機 会なんてないもんね。 「ゼリーっぽくも有るよね」 「……おい。自分のだろ?何か食欲覚えたって 目付きだぞ?」 冷静な時ならね。でも今は何か、欲しい。 「半分こする?」 「じゃ、こう、な?」 掌の上に溜まったぼくのをカゲリが口に収めて、 そしてキス。カゲリの唾液が混じる所為か、少し 甘い気がするのは気のせいだろうか? 「牛乳系だけど…なんか違うよな?」 「爽やか、とは言い難いね」 そして、顔を見合わせて共犯者の笑み。 「此れでぼくの取り分が一口分だけ、って事は 無いよね?」 「コップ一杯分まで頑張れってか?」 「無理?」 「やってやるさ。先ず一口目、上?下?」 「此処まで綺麗にしたんだから、当然下!」 結局、コップは七分目まで満たされたけどね。 |