プラシーボ

                    これは、いい機会かも知れない。
                    正しく鴨が葱背負って来たって感じだわ。
                    さて、お姉さんが一肌脱いで上げますか。
                   変にプライドが高いあいつの為に。

                    「桜井先生、一寸…」
                    看護主任・遊馬朱鷺に呼び止められ、不審
                   そうな顔をしたのは薬師寺クリニックきって
                   の美形と呼び名も高い医師の桜井京介(内科
                   担当)である。
                    「何かな、遊馬主任」
                    「501号の栗山さんの事で」
                    「此処では言い難い?」
                    「出来れば」
                    「判った」
                    で、何処が結局内緒話に向いてるかと言え
                   ば案外屋上だったりする。
                    「で、何なんだ、朱鷺?」
                    口調もがらりと遠慮ないものに変わる。ま
                   あ、二人は幼馴染なのだから無理は無いか。
                    「栗山さんの、指SPお願いしたいの」
                    「何で僕が」
                    「幾らディスペックスしてるからって言っ
                   ても、女の子達、抵抗あるみたいだしさ。特
                   に栗山さんには」
                    「…男なら平気だろ、って?」
                    「好いじゃない。それに、正直言って、好
                   みでしょ?」
                    「ばれてたか」
                    「幼馴染を嘗めないでね。まあ、あんたの
                   身持ちの固いのは判ってるけどさ。W大の先
                   生とは、まだ続いてるんでしょ?」
                    「神代さんは今此処のJrとくっ付いてるよ。
                   まあ、確かにあの子もいいタイプだしな」
                    「…そう。悪かったかしら?」
                    「今更。そう言う遠慮はするなよ。お前こ
                   そ最近恋してるのか?」
                    「してるわよ。じゃ、栗山さんの件、頼む
                   わね」
                    「一応、付いて来いよな」

注釈  指SP:
     指サポート。
     座薬多様を防ぐ為に用いられるプラシーボ(偽薬)的処置。
     
     ディスペックス:
     使い捨てプラスティック製手袋。100枚入り
     ケース単位で市販もあり。

                    かくしてその夜、予想通りナースコールは
                   響いた。当直看護婦は遊馬朱鷺、当直医師は
                   桜井京介。
                    「栗山さん、どうしました?」
                    「すみません…座薬、お願いしたいんです
                   が」
                    「判りました。今から行きます」
                    目配せをして、二人して向かう。

                    「はい、栗山さん。お薬入りましたよ。後
                   20分で効いて来ますから」
                    看護婦さん、本当の事を言ったら怒るだろ
                   うなあ。体調の為に座薬が欲しいんじゃなく
                   て、体の疼きを止める為に座薬を挿れる行為
                   がしたいんだって言ったら。
                    最初は違和感があった感覚なのに、今では
                   すっかり自分から欲しがる快感になっちまっ
                   たからなぁ。
                    あれ?…溶ける気配が無いな?それに、な
                   んか少しずつ動いている様な…?
                    …え!内科の、桜井先生?俺、タイプだっ
                   たんだよ!

                    「これが欲しいんだったら、最初から言っ
                   てくれれば」
                    「だって先生もそうだったなんて…、…っ
                   ひっ…」
                    「水臭いな、京介、だよ」
                    「きょ…う、す…け…っ」
                    「良く、出来ました…っと!」
                    「抉らないで…イっちゃう…!」
                    
                    『上手く行った、みたいね』
                    一人ごちて溜息。全くあの幼馴染にも世話
                   が焼けるわ。
                    …いいけどね。あたしの初恋の相手が自分
                   だなんて…気付いてもも居ないだろうけど。
                   まあ、へこんだ顔のあいつと居るよりはまだ
                   好いわね。

                    満月が、静かに微笑んでいた。


                   《コメント》
                     マツコさん提供の後さくやさん発酵の
                     『桃色倶楽部』サルベージネタです(爆)
                     一気に書き上げてみました。

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