SIGNAL「蒼、いい加減に言いなさい。誰から貰ったん だ?」 「…言わない」 「おい、蒼猫。京介はお前を心配して…」 「心配?嫉妬でしょ?」 直径5ミリにも満たない石が、蒼を僕から遠ざ けて行く。彼を縛るつもりは無い、なんて言いな がらも、自分が嫉妬に狂う只の男と言う事を思い 知らされる。 彼の耳元を飾る、小さなトパーズのピアスによ って。 大学進学の時に僕が彼に送ったのはエメラルド のピアス。彼の本当の誕生日に因んだものだ。 『一寸痛い、かな』 初めての感触に戸惑う彼。無理も無い。耳朶は 彼の弱点でもあるのだし。 『でも初めての時よりはまだましかもね』 悪戯っぽく笑って口付けて来る。 『もう一つ、お祝い上げようか?』 体に当る熱さが返事だった。其れがまだ半年前。 そんな短い時間で、心を変える事が…。信じたく なかった。 付け替えたとしたら多分『香澄』の誕生日の前 日。用事があるとかで、珍しくマンションに戻っ た日。 そして、付け替えたピアスはケースに収まって、 ベッドの脇テーブルの上。『幸運』の意味を持つ 緑の光は心なしか薄れ、耳元には黄色い光が揺れ る。意味する所の『潔白』とは程遠くなった彼。 ……許せなかった。 離れる事など、許せなかった。 「深春」 僕の意思は判っている筈だろう? 一瞬の戸惑い。でも、諦めた様に一度頭を揺 さぶると蒼の体を小脇に抱え、その臀部を曝け 出す。 「きょう…すけ?」 「まさか期待した?悪い子には、お仕置きだ ろう?」 掌を翻し、剥き出しになった肌を強かに打つ。 「あぅっ!」 「お仕置きらしいお仕置きをしなかったのが 悪かったかな?まあ、今からでも躾は遅くない だろうし」 滑らかな白い臀部が桜色に染まる。僕の中で 何かが壊れた。 部屋の中に響くのは僕が彼を強かに打つ音と 彼のうめき。暫くすると其れが微妙に変化し始 めた。 臀部を打たれる毎に、赤みを増してゆく彼の 耳朶。前が硬直して来ているのは…歓喜故?う めきは何時しか快楽のくぐもりに変わっていた。 「感じてるの?蒼」 耳元で囁いてみる。 「もっと…京介…」 「もっと、何?」 「打って…もっと…お尻…」 焦点がぼやけ掛けた瞳で訴えてくる。 この快楽は、彼を縛る新たな鎖になり得るだ ろうと確信する。この快楽があれば、彼は又僕 の許へ帰るだろう。 「お痛の度に、こうしてあげる。望むならね」 そう囁いて、掌を翻す。 蒼は其れから七打ち目に、打たれる快楽だけ で達した。 《コメント》 微妙なネタばれの上にSM。 壊れたのは京介ではなく葡萄瓜の様です。 集めた資料の傾向が悪かったかなぁ。 |