薄紅の鎖いつも隠れている所に、不意に感じた感覚に戸惑う。 「蒼?」 「余りに白くて、綺麗だったから」 「莫、迦」 照れの余り、耳まで紅に染まってしまう。蒼が口付け ているのは僕の襟足。普段は自然に、と言うよりも無造 作に流した髪に隠された、より一層白い、肌。 確実に刻印は刻まれているだろう。不意に目にする度、 自分の中の獣が目を醒まして、宥めるのに苦労する、甘 くて痛い所有の標。 「皆、知ってる様で居て…此処は判らないんだろうね」 少年、と言うよりも雄の声に聞える蒼の囁き。何時の 間にか年齢の壁を取り去って、僕を満たし始めた。 最初は、抵抗があった。同性の禁忌と言うよりも、関 係に束縛されるのが嫌だった。其れを彼はあっさり取り 払ったのだ。其の直向さで。 だからと言って一つに溶けてしまえば良い、とはお互 い思っていない。同じ人間が愛し合うのではなく、僕と 蒼が愛し合うからこそこの関係は意味を持つのだ。深春 との関係は、又別の意味合い。3人で交わる時は純粋に 肉欲だけの、世間から見ればルールを外れた関係。 「胸にまで続けるかい?」 「構わない?」 「まだ人肌恋しい季節だから、何とでもなるさ」 「じゃ、遠慮なく」 襟足から首筋を通って、そして二つの飾りに至る。悪 戯な指先が、戯れを仕掛ける。 「こら」 「いいじゃん、別に」 「後からの愉しみが減る」 「愉しみって?」 「枕元、見て御覧」 其処に置いてあるのは不意な気紛れから買い求めた、 快感を引き出すと言う玩具。唇の代わりに空気圧で飾り を愛撫すると言う、一見何の変哲も無いポンプ。 「先ずは蒼が味わって御覧?それから僕に試せば良い」 想像しただけで濡れたらしい。押し付けられた熱さか ら滲み出る歓喜の涙。息も、心なしか荒い。 「ほら、唇がお留守だ。続ければ?」 「…意地悪…」 少年の声に戻って、耳元で囁く。言葉の遊戯を君に教 えたのは僕。この領域では僕が優位に立たせて貰わない とね。 僕と君を繋ぐのは赤い糸。其れは、夜の帳の中で薄紅 の花弁の鎖になって、今の僕等を結びつける。時に、一 つに溶け合いたいと、自らのタブーを破らせようとする 様に。 「蒼にも、刻んであげようか?」 首筋が真っ赤に染まり、そして、無言の頷き。 《コメント》 発想の原点から随分あざとくなったかな? 某人工知能付き掲示板での会話と、 今は無きチューリップの曲から発想を得て 書き始めたんですが…影が微塵も無いな、 |