月さえ見ない

からかったつもりだった。
でも、其の次の瞬間、唖然としたのは僕だった。
「へぇ。こう言う場所にくると味覚も嗅覚も発達するんだな」
深春の瞳に横切ったのは、紛れも無く劣情。

「判るも何も、厚焼卵に混ぜ込んであれば察しが
つくよ。同じ蛋白質とはいえね」
「それだけじゃないけどな」
「お握りは手で握るんだから多少の移り香程…」
「汗、混ぜてみた」
「……悪趣味だね。君も食べる分だろ?」
「其の辺は抜かり無しさ」
悪戯小僧のように…いや、悪戯小僧はこんなに淫らには
笑わないな。そう、僕を焦らせて愉しむ時の、あの顔、だ。
「何の為に俺が積極的に取り分けてると思う?」
「成程。それは盲点だったね」
全くこの男は…こう言う方面に関しては僕よりも策略家
なのかも知れない。蒼の教育を任せなくて正解だったな。
でも、たまにはこう言うのも、良いか。
「深春」
「ん?」
「横たわる場所はあるけど、そう大した寝具は無い」
「だな。エアマットと寝袋、か」
「しかも僕のも君のも一人用だしね」
「で?」
とことん意地が悪いな。こっちから意を決して誘ってるのに。
「寝袋に入るまでの体力、残るかな?」
「残したいけど、保障はしない」
「君らしい返事だ」
「最終的に萌えてんのはどっちだよ?え?」
何年経ってもこの意地悪で…優しい微笑みは変わらないな。
蒼の事もあるけど、僕が『決心』を鈍らせているのは
多分この表情の所為だ。この表情を僕だけのものだと
確認したくて、ついからかってしまう。
「出来れば蒼の方がこう言う場合の相手には良いんだけどね」
「体温が高く思える程まだ子供だってか?」
「僕にとっては、ね」
「こう言う場合、人肌ってだけでも結構暖かいんだよ!」
「皮下脂肪もあるしね…最近、太ったんじゃないか?」
「ああ、そろそろ戌の日だしな…って、オイ!」
駄目だな。余りにもからかい甲斐がありすぎる。
でも、そろそろ着火した方が良いな。焦らし合いも、そろそろ限界だ。
「深春」
「とりあえず、着たままな?」
「種火が安定するまでね」
「早く萌えて消えたんじゃ、愉しくないだろ?」
「お互い様」
口付けと、互いの分身に絡まる指。
でも、ね。
「下になってくれるよね?エアマットがあったとは言え…」
「じゃ、下だけで良いか?」
「それじゃ満足に確認できないよ。君の味をね」
囁きかけながら、一枚二枚…。
「…やっぱ寒いな、流石に」
「すぐに熱くなるよ。熱くしてくれるんだろ?」
「努力します」
胸の突起を味わう僕の体の上を、ゆっくりと指が這いまわりだす。
ひょっとしたら徹夜で味見をしてしまうかも知れない。
まあ、それはそれで、いいか。
《コメント》
邪まとは、日常の中に劣情を見出してしまう事なのだと思います。
ああ…誘う原作が悪いのか、それとも、挑発に乗る読者が悪いのか…。
指が勝手に物語(妄想)を紡いでゆく…。

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