視線浴宙に舞い上がってしまったぼくの体を受け止めた 京介の手は、中々離されなかった。 「もう、だいじょ」 うぶ、と言い掛けたぼくの耳に響く、肌越しの激し い胸の高鳴り。 …そう言えば最近、そう言う風に寝てなかったよ ね。 ここは旅行先じゃなくて、京介の仕事の依頼先! と自分に言い聞かせる。でも、それで言う事を聞い て静かになってくれる体じゃ無いのは判ってる。 だから、わざと体をくっ付けて、ぼくの状態も判っ て貰う。 「…蒼」 潤んだ視線で見つめられてる。珍しく京介の方が 理性を先に手放したみたいだ。 「したい?」 「蒼の中に入りたいな」 「ぼくは京介の中に入りたい」 ぼくだって男だもん。判るでしょ?そりゃ、京介 で満たされたいのもあるけどさ。 そして暫らく無言の駆け引き。先に熱さの頂点に 行って、自分を手放した方が抱かれる暗黙の了解。 …でも、こう言う勝負だとぼく、圧倒的に不利なん だよね。だって、ぼくを仕込んだのって、京介がメ インだから。満たすのも、満たされるのも。 首筋に軽く吸い付いて、所有の印を刻んであげる。 もう一歩で、京介が先に落ちる。そう、ぼくが確信 した瞬間だった。 「お若いな」 刀根さんの声で、一瞬、皆凍りついた。だって、 どう考えたって真っ最中な訳だし…。しかも、余所 のうちのお風呂…で、刀根さんは輪王寺さんのお供 な訳で……。 と、グルグルしてるぼくを気にせずに、刀根さん は先生の横に陣取って、信じ難い一言。 「まだお元気な様子。良いから気にせずお続けな され」 って、それって、刀根さんと先生が観客で…って 事? 「続けようか、蒼」 「〜〜〜京介ぇ〜〜」 「今更静かに眠れるのか?」 「…うー、自信ない」 「刀根さん」 「ああ、桜井様、皆まで言わずとも大方察してお ります」 「彼女は既に?」 「左様で。ただ、薬師寺様を見て少々からかいた くなった、そうで御座います」 ……なんだ。緊張して損した。じゃ、何で刀根さ んがここに? 「昔取った杵柄を思い出すのも悪くは無いと思い ましてな」 負けました! じゃ、お言葉に甘えて…。 ここまで体が熱くなってるなら、と指を2本滑り 込ませる。あ、むしろいきなり本物の方が良かった かな?吸い付きが激しいや。と、油断してるとぼく の方も開かれる。 「行かないなら、行くぞ?」 「…ゃ、一寸待って、よっ」 「待たない。欲しいのは蒼だけじゃ無いんだし」 「深春は?」 「接待中」 あ、確かに。 刀根さんが深春の体に食欲を呼び起こされたみた いで、先生と2人で解き解しの最中。でも、6つの 視線はずっとこちらに。 「……っ…ふぅ…っ」 押し殺した声の響きとの相乗効果に、こちらまで 釣られて昇り詰めそうになる。…駄目…そんなに声、 聞かせないで…。 「イきそう?」 「意地…悪…」 「いっそ、お互いの指でイくのも面白いかもね」 そう囁きながらぼくの中で更に指を躍らせる。 「蒼も動かして…まだまだ足りないから」 「う……ん」 空いた方の腕で強く抱きあう。抱き合って密着し て、このままくっ付いてしまえば良いのに、とどこ かで聞いた台詞を思い出しなから。ぼくも京介も、 もうトロトロ。カチカチじゃ無いけど、頂点に近い、 不思議な感覚。 「京介…」 「一緒に、イこうか?」 「うん」 そしてぼくらは、初めてお互いの指だけで、絶頂 を迎えた。 (2002.12.30) 《コメント》 |