硬質な情熱

 「写真、撮ってみない?」
 蓉が、するりと言葉を投げ込んだ。
 「んだよ、いきなり」
 「今いる劇団の企画で写真集作ってたんだ
けど、予定よりも早く終わっちゃってさ」
 「うんうん」
 カズミが促す様に目を輝かせる。その横で
一寸気だるそうにカゲリが煙草を吹かしてる
が…耳ダンボになってるのはお見通しだって
の。
 「早く終ったんなら撤収した方が経費節約
になるんじゃね?」
 「そうでも無いんだ。期間につき定額で全
て調達してるから」
 「で、なんで写真をとる話になるんだ?」
 カズミに相槌を任せ、俺は探りを入れる役
回り。カゲリは耳ダンボを決め込むらしい。
 「企画に興味を覚えてさ、『友人達と一寸
企画で遊んでみたいんですけど』って代表に
耳打ちしたらあっさりOK貰ったんだ」
 「まーさかおまけを付けてねだったんじゃ
ねーだろうな」
 「さぁ?」
 悪戯っぽい微笑で躱される。か、可愛くね
ぇ。ベッドの中とは大違いだ。
 「どう?一寸ノってみない?」
 「企画のお題はなんだったんだよ」
 カゲリ、ついに乱入。一寸そそられたらし
い。
 「ギリシャ神話系統の絵画彫刻を人間で再
現って奴。全部裸体の奴ね」
 「ふうん」
 カズミの目の色が変わる。無論、カゲリも
そう。俺もそうだったに違いない。
 「カメラマンは?」
 「そこまで予算がなくて交替でやったんだ」
 「4人だけ、だね」 
 「そうだね。誰か呼ぶ?」
 「まさか!」
 こんな状態に邪魔者は要らないのは4人の
共通見解の筈。
 「じゃ、話通すよ」
 携帯電話で話す蓉。そして、意味ありげな
微笑とVサイン。
 「明日の午前11時集合って事で、宜しく」
 それがGOサインだった。

 「もう少し自然に眠ってる感じで…まだ頬
が引き攣ってるよ」
 「カズミもまだ笑えてねえぞ。もう少し明
るく!」
 好き勝手ばかりを言うカメラマンと助手に
対して視線でぼやき合う。
 『これで興奮するなって、拷問だと思わね
ぇ?』
 『中からと視線からだもんね。後でペナル
ティはしっかり払って貰おうよ』
 『だよなー。こっからみるとあいつ等が開
放されてるの判るもん』
 『ぼくの場合ヒロのを見て余計、だけど』
 『お互い様。カズミも相変わらずで』
 こう言う二人が妖精とエンディミオンの絵
を真似ているんだから世話ねーぜ。
 集合した全員に蓉から今日のルールを知ら
された時は、絶句するしかなかった。

 *興奮の素振りは見せてはいけない
 *撮影終了まで器具埋め込みの事
 *行為は終了まで一切無し

 その上で餌をしっかりぶら下げる。
 「終ったらしっかり遊ぼうよ」
 どこでするどんな遊びか、は言うまでも無
い。
 アモールの絵を演じたカゲリも相当歯を食
い縛って持ち堪えたらしい、が、遠目でみる
と少し滲んできているのが判る。実は俺達も
限界。全く素振りを見せないのは蓉…流石。

 でも、それはあっさりと崩れた。蓉が演じ
たのはヘルマフロディトス。それを選んだの
は蓉自身。つい勘繰ったのは俺だけじゃなか
ったらしい。
 「蓉」
 「なに?」
 頬が赤いのは狼狽の所為、だけじゃ無いよ
な?
 「反対側からも撮って良いよね?」
 「……言われると思った」
 「あ、確信犯だったんだ」
 「誤魔化せると思ったんだけどね…」
 ばつの悪い笑いを浮かべてみせる。そして
反対側に回り込んだ俺とカゲリの見たものは。
 「蓉、後でじっくり体に訳を聞くからな」
 「……個人差とは言え…不公平だぜ」
 「カゲリがショック受ける事はないだろう
が。俺のなのに」
 生身のヘルマフロディトスの男性部分は、
本当に男らしかった。撮影後の楽しみが出来
た、と俺はカメラに向かって笑った。
           (2003.3.2)
《コメント》
色々と絵画彫刻資料を集めている内に
話が降りてきました。
京介達を出さなかったのは、お約束打破と
言う臍曲がり心理からです。

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