微かに…ベッドの軋む音だけが響いている。
睦言は一切無いままで。それでも深い満足と共に、行為は終わる。
それでいいと思っていたんだ、今までは。
誘うのはいつも京介。彼にとってこの行為は欲望の昇華、では無い
らしい。
ごく自然に誘い、そして満ち足りて離れて行く。
対してぼくはただ快感だけを吐き出して、翻弄されて、やがて眠り
に落ちる。
この行為が本来は子孫を残す為の行為だと言う事は、関係が始まっ
てから…5年前から判ってた。それでも拒もうと思わなかったのは、
京介があまりにも透明だったからかもしれない。
ぼく達にとって、肉体関係と言うのはせいぜい全体の1%にしか、
過ぎなかった。ものすごく重たい1%だけど。
「京介?」
「何?」
「何でぼくを抱かなかったの?」
「蒼の方が強いからさ」
笑って交わされたけど、全然判らない。彼には少しも女々しい部分
なんて無い。にもかかわらず、関係は最初から彼の中でぼくが果てる、
と言う進行だった。
京介は絶対答えを言わないだろう、とは判っていた。でも、聞きた
かった。
いつしか、ぼくも彼に抱かれたいと思い始めたから。
いっそ抱かれてしまえば、答えは出るんだろうか?
ああ…、また夜がきた。
多分答えの出ないままで、ぼくは彼を抱くのだろう。
それとも。
抱いているけど、抱かれている、のかもしれない。
全ては、夜だけが知っている、重たい1%の関係。