7305の昼と夜
やっと満足したかの様に,あいつは体を離した。 何かあったのかと問い詰めてやりたいんだが,余程激しかったのだろう。体 が言うことを聞かない。 全くこの幼馴染は昼は昼でこき使って,(ごく偶にしても)夜もここまで容 赦が無いのだから困る。まさか思春期の延長がここまで来るとは俺も思ってい なかったが。 …いいけどな。こいつをここに引き止めておく事が出来るなら。その為に俺 の体が必要だってんなら幾らでもやるよ。 それにしてもこいつと知り合って…おい,20年かよ。ずいぶん長持ちする 「友達」だよな。 最初はこんな簾の親玉みたいな前髪もしてなくて,初めて見た時は本当に 「天使だぁ」なんて思っていたのが……これだぜ,今じゃ。面は年を重ねる毎 に美人になってる(!)とは思うけど,根性はそれに反比例してだんだん悪く なってねぇか?特に俺に対して。 で,こんな「関係」になったのが15年前。それこそ思春期真っ盛り!てな もんで,誰かしら言うに言えないもやもやを抱えていた。俺だって例外じゃな かった。 でもあいつまでそうだとは思ってなかったな。今でもそうだが,あいつ,そ ういう方面にはまず関心なさそうだしな。でもそれが大きな思い込みだったと いうのを俺は身をもって知った。 「深春」 「んだ?」 「一寸,試させてくれないか?」 「何をだよ…って,おい,こら」 言うが早いか行動をしっかりと起こしており,俺は連続する快感に抵抗する 機会を失って・・・見事に「奪われて」しまった訳だ。 「お前,そっちの趣味かよ?」 「違うよ。ただ試したい相手が君だっただけさ」 あのな。重要な問題点を事も無げに言うなよ。 まあ,癖にならずに済んだのはお互いの為だった。あいつはどうか確認した 事は無いが,俺の本来の純潔は18の時に無事捨てる事が出来た。相手の遺伝 子はXXだった。 それ以来,あいつと俺は多くても月に一度の割合で体を重ねていた。位置関 係はその間も変わる事は無い。世間にはどう映るかは知らないが,あいつが俺 の中で果てる,というのが変わらぬ構図だ。 それがここ最近,半同居という形になってからというもの,割に頻繁になっ た(といっても週1の割合だが)。 こいつが俺を求める時,それは心に暗闇を抱えている時だ。今回の暗闇の正 体も,多分俺は分かっていると思う。それでもこいつは話さないだろう。体を 重ねていれば,一瞬でも目を逸らしていられるから。 「泣かせるなよ,蒼を」 疲れて横たわるあいつの横顔に向かって呟く。あいつと俺の共通の宝物。そ してあいつを地上に繋ぎ止められるだろう唯一の存在。 あふ,俺もバイトの時間まで少し眠るかな。 お休み,京介。
《コメント》
京介と深春が幼馴染(初期の新書版ではそうなってるみたいです)
という設定の下に書き上げてしまったもの。
ここより葡萄瓜の特性ともいえる『逆転』が始まったともいえますね^^;