痛みの理由

                    「礼次郎」
                    「なんだよ、バカ木場修」
                    「痛み、治まったのか?」
                    「治まる訳無いだろ、バカ」
                    「バカバカ言うな!其れしか識らねぇのか」
                    「僕は京極堂じゃないんだ。そんなに知るも
                   んか、其れに」
                    やけに生ッ白い背中が喋る。
                    「アレをやってくれない奴には、バカで充分
                   だ」   
                    ……ッたく、餓鬼なんだか何なんだか。

                    俺が礼次郎と肌を併せ出してもう何年だ?ま
                   あ、十年は優に越してるよな。
                    『おめぇ、陰間は嫌いだって言ったよな?』
                    『ああ、言ったさ』
                    『じゃ、俺と遣るのはどう言う訳だ?』
                    『木場修は何処から見ても男だろ?』
                    『ンあ?』
                    『別に僕も受け入れるからといって女性にな
                   りたい訳じゃない』
                    『だろうな』
                    『木場修は、僕を受け入れて女性になりたい
                   のか?』
                    『滅相もねぇ』
                    『だから、こうしてるんだ』
                    『なよなよが嫌なだけか?』
                    『そうだな。それに、満更悪くない眺めだし
                   な』
                    『眺め…って、やい、礼次郎!何見やがった
                   んだ?』
                    『内緒』
                    そう言いながら確り俺も喰われちまった。
                    まあ、な。そう言う理屈ならこいつらしいと
                   思う。野郎同士の乳繰り合いだ。どっちかが女
                   の代わりって訳じゃねぇ。だから、なよなよし
                   てると気色悪ィ、ってのは頷ける。
                    只、こいつの偉い所は、それでも人間として
                   見てるって事だよな。鳴釜事件で名を馳せちま
                   った2丁目の金公だってよ、カマって事を嫌が
                   りこそすれ、『大した人だよ、あれは』って褒
                   めてやがる。あいつがだぜ?
                    でも、やっぱ甘えたくなるのかね。受け入れ
                   た後ってのは。特に今日は…俺も余裕無かった
                   しなァ…一寸切っちまったか。後ってのは切れ
                   ると痛えんだ。少しでもよ。
                    
                    「礼次郎、尻、こっち向けな」
                    「何だよ、一体」
                    「赤チン、塗っといてやる」
                    「赤………、止めろ!赤いのはお前がさっき
                   切ったので充分だ」
                    「アレも遣ってやるから」
                    「本当に?」
                    「本当だ」
                    「言わなかったら山嵐丸呑みだぞ」
                    「……珍しく覚えて居やがったか」
                    「ん?何?」
                    「何でもねぇよ。ほら、早く出せ」
                    素直に腰を突き出して、歳の割に張りのある
                   尻が俺の目の前に開かれる。
                    「こりゃ痛ェな。すまねぇ」
                    「良いよ、修ちゃんなら」
                    「やけに素直だな」
                    「こんな格好だしね」
                    面白ェ……珍しく頬なんて赤らめてやがる。
                   もう少し見ていたい気分だぜ。でも、こいつの
                   嫌がりも余りみたくねェしな。此処はまたの機
                   会にすっか。
                    で、筆に赤チン含ませて…っと。
                    「……っつっ……」
                    「染みるか?」
                    首を横に振るけど…痛いよなァ…こいつ、堪
                   え性ねぇもんな。
                    「痛いの痛いの、飛んでけ!」
                    「もう1回!」
                    「痛いの痛いの、飛んでけ!」
                    息を吹きかけて乾かしながら言ってやる。 
                    「有難う、修ちゃん」
                    この笑顔に、どうやって太刀打ちすっかねェ。

                    のんきに寝てるよな、バカ修。
                    でも、こんな時でもなきゃ、お前を独占でき
                   ないじゃないか。
                    「観える」のが、僕との余韻だった時は良い
                   けど、他の女の横顔だったりした時、僕がどん
                   なに悔しいか、判ってないだろ?
                    女々しいのは嫌いだ。神に相応しくない。
                    でも、痛むのを慰めてくれ、と従僕に命令す
                   るのは、神の権限として許されるよな?
                    だから、僕の痛みをずっと和らげなさい。僕
                   は修ちゃんを手放すつもりなんて、欠片も無い
                   んだから。


                    《コメント》
                     あっちゃー!乙女エノさんになって
                     しまった(苦笑)全然違うのだったのに。
                     「赤チン」と「痛いの痛いの」は別BBS
                     での会話からのネタです。
                     赤チンも一応年代確認しました。
                     1919年に開発されたそうですね。
                     因みに消えていった理由は、水銀化合物
                     が含まれて居たそうだったから、らしいです。

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