迷う言葉
幾ら何でも、理不尽な気がする。
運命の皮肉と言うものに思い切り弄ばれて
いる様な気がする。
考え過ぎだろうとは自分でも百も承知なんだが、
それでも考え込まずには居られない。
……龍宮は、何故「亀さん」ではないのだろう?
若…鴉城蒼也と一戦を交えるとき、つい考えて
しまう。龍宮は若が『亀さん』だったから好きに
なったのか?
…如何もぞっとしない考えだ。第一、自覚症状
があったのは体を重ねる前の話だ。確かに若の
『亀さん』は龍宮のツボを最初から確実に突いて
いた。完全に受身初心者の龍宮が快楽故にリラッ
クスしていたのだから。
そう言えば…成り行きで龍宮は若に「抱かれて」
いたが…逆転は可能だろうか?
ふと浮かんだ考えに城之介は苦笑する。
『龍宮は、《象さん》だからな』と。
そして、悶々とした気持ちはループしつつ…
多少八つ当たりの気持ちもあってか力無く垂れ
下がった蒼也の『亀さん』を弄んでいる訳だ。
「龍さん……まだ足りないの?」
「足りないと言う訳じゃないが、……『亀さん』
とは良く言ったものだな」
「もっとそれらしくして見せようか?」
言葉に悪戯っぽい笑いと微かな欲が滲んだかと
思うと、垂れ下がったスポンジに芯が通りだし、
気付いたときには何時も城之介が感じる熱さを
滲ませる楔になっていた。
「こうなるのか。凄いな」
「龍さん…いや城さん、この状態見るの初めて
だっけ?」
「見るのはね。体で何時も感じていたし」
『城さん』と蒼也に呼ばれただけで眠りかけて
いた欲を呼び覚まされる城之介である。
「まあ、とりあえず拭き清めてはいるし、な」
「え?」
「こう言う風にも欲しくなってしまったんで…
まあ、ご愛嬌と言う事で」
「だから何言って……くふぅっ…」
少なくとも蒼也の経験値を考えると、いきなり
口で包み込まれればかなり戸惑うと思う。それ
も相手が城之介だ。
「城さん…ちょっ……さ…きまで、俺の」
「ういははあおんないあひ」
「しゃべら…舌が……」
「ほほえん?」
『亀さん』を口に含みながらも城之介は冷静に
なっていった。快楽を追っていない訳ではない。
逆に快楽を何処迄引出せるかで冷静になる必要が
あった。指の動きも決して疎かにしていない。
周辺を探ってより一層の快楽を求めている。
『此処もそうか?』
指に感じたのは微かな湿り気と内壁特有の熱さ。
うっすらと口を開きかけて居るを幸い、人差し指
第一関節まで埋めて、動かしてみる。
「……!……」
声にならない悲鳴を上げて、蒼也の体が仰け反る。
目尻には薄らと涙。でもその声にやがて滲んできた
甘やかさは、その涙が快楽故のものだと物語っていた。
やがて飲み込み加減も人差し指根元までから中指と
人差し指まで増えてゆく。それも中で広げると余計に
声が艶やかになる。
そして訪れる絶頂。
「……んん…っ…城…さ…んん…っ」
どうやら、快楽は自乗なんてものでは無かったらしい。
「城さん」
「ん?」
「後で試させてよ。城さんの『象さん』」
「動きに自信は無いぞ?」
「俺が動くよ」
結果として、『象さん』も『亀さん』も快楽を
引出すには充分と証明された。まあ、サンプルが
この二人なので、信憑性を考えると、些か…。