ささやかな我欲

 一人で夜を過ごす事に抵抗を覚える自分に何時か気付いた。
 職業柄、本来ならば一人で過ごす時間を確保しておくべきで
ある、にも拘らず、邪魔をし続けられ、其の邪魔を愉しむ様に
なっていた自分に向き合って初めて知る。喪った存在の呆気な
さと其の大きさに。
 「蒼也…」
 返るのは、広い部屋のこだまだけ。

 幻影城へ赴く前、北海道の事件を解決して其の地での最後の
夜も二人で過ごしていた。
 「龍さん…我慢しないで…」
  肌を密着して耳元で囁くしなやかな肉体…鴉城蒼也とこう言
う関係になったのはコンビを組んで程無くでは無かったか。何
故かこの少年、青年と言い直すべきか、とは初対面から馬が合
った。
 最初は親愛の情のキス。言葉よりも其の方が有効だったから。
其れが程無くして親密すぎるコミュニケーションに変わり、
最終関門を超えるのには、左程の時間を要しなかった。
 「んんっ…く…ふう…」
 我慢しないで声をあげて、と言われて、はいそうですかと声
を上げるなんて…矢張り抵抗がある。ましてや、いつも自分が
受け入れる側とは言え、年上であるのだからそれなりの矜持は
見せねば、という気持ちもある。
 そうすると焦れるのは蒼也だ。
 二人にとってこの行為は単なる性欲処理ではない。親愛の情
の顕れであり…俄かには信じて貰えないだろうが職務上でも有
効な手段なのだ。
 でも折角なのだから快楽も欲しい…のは人情というもの。
 だから、あえて禁じ手を遣う事にする。
 「城さん」
 熱っぽく囁くと耳元から体全体に朱が走る。
 「や…め…其の…呼び…か…」
 「止めてあげない。普段でも呼びたいのに」
 繰り返し呼んで、熱を呼び込む。
 「わ…か…ぁ…」
 「じゃ、無いでしょ?城さん?」
 「そう…や…」
 「よく出来ました」
 後は只管腰を打ち付ける。快楽の向こうに在るものを呼び込
む為に。

 「莫迦」
 「感じてたじゃ無い」
 「あの呼び方、龍宮は嫌いだ」
 名残も其の侭に、ベッドの中で寄り添って言う。
 「そう?俺は好きだけど」
 物足りなさそうに肌の上を這い回る右手。
 「ご協力感謝してるんだけどな。この方法、下手な無駄足よ
りも有効だから」
 あの満足感の後の空白に訪れる冴え冴えとした思考…其れが
彼のもう一つの武器でもあった。なまじ公には出来ないが。
 「別に…龍宮もこれが嫌な訳じゃない。あの呼び方が嫌なだ
けだ」
 「何で?」
 「笑わない?」
 「多分」
 笑われるだろうと確信しつつも口を割る。
 「若も判ってるだろう?龍宮自身の形状を」
 「関係あるの?」
 「大いに」
 確かに城之介自身の形状は、年齢を考えると限りなく少年に
近い。発毛は充分だが。
 「言葉の響きと、…龍宮の思考回路の所為だな。若に其の名
前で呼ばれると…つい熱くなってしまう」
 「あ…」
 呆気にとられ…頬を熱くしたのは蒼也の方。
 「『象さんは嫌だ』…って、そっちの意味?」
 「若は充分亀さんだからな。使用率は少ないが」
 「馬鹿…」
 今度は蒼也が沈没する番だった。

 神なんて、嫌いだ。
 今目の前に神なる存在が居たら、城之介は破壊衝動に駆られ
るだろう。
 せめて、夢の中で彼と会おう。そして…。
《コメント》
思いつきと衝動のままに書き上げた
JDCパロ第1弾。裏ものであります(爆)
『象さん』をキーワードにここまで
引っ張ってきてしまいました。
石、投げないで下さい。
これでも好きなんです、このシリーズ。 

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