1×1     

 「珍しいな、何時もなら奪い取ってでも飲むのに」
 「其れは僕の台詞。ゼロイチがお茶を素直に出して
くれる事って、無かったもん」
 「要らないならいいぜ。要らないなら」
 「要るに決まってるじゃ無い。ね、お茶菓子は?」
 「どうせ自分の分は持ってきてるんだろ?クリーム
どら焼き」
 「バレテーラ」
 屈託なく笑う奴の喉が動くのを観察する。ま、偶に
はこいつ自身にも実験台になって貰おう。

 へえ、随分と効果が高い調合をしてくれたんだな。
殆ど即効性に近いな。こいつの調合だから効果は期待
してたけど…此処までとはな。
 「ゼロイチ?」
 「自分で調合したハンガリー水、味はどうだった?」
 「…少し味付けしておくべきだったかな?ゼロイチ
相手だから油断してた…」
 辛うじて喋るものの、その媚薬効果で体に押さえが
効いていないだろうと一目で判る。
 「最初からお前相手に遣うつもりだったしな。…期
待、してたんだろ?本当は」
 「自惚れ屋」
 「正直に言わなきゃ、俺、見てるだけ」
 「是。リンイチも正直になってよ」
 「何の事だ?」
 「テーグの事。僕への当て馬?」
 「判ってて訊くか?」
 「リンイチの口から聞きたい」
 眼差しも、口調も真剣だ。だから、はぐらかすのは
もう止め。こう言うこいつだから好きになったしな。
 「ああ。焼餅焼いて貰った方が萌えるしな」
 「意地悪」
 「熨斗付けて言葉、返してやるよ。お前のいつもの
おふざけで大部鍛えられたんだからな」
 「振り向いて貰えるから…」
 ポツン、と寂しげな呟き。
 埋め合わせに、優しく口付けてやる。
 「リンイチ…」
 「何時もそう呼んでくれると嬉しいけどな。変える
気、無いか?」
 「意識しちゃって嫌だ。普段はゼロイチ!」
 「ハイハイ」
 で、首筋に軽く噛み付く。
 「あ…」
 「散々間があいたんだ。今夜で少しは埋め合わせる
か」
 「一晩じゃ足りない癖に」
 言葉は其処まで。後は只管本能任せ。

 「ゼロイチ」
 「一緒には暮らせないぜ、俺」
 台詞の見当をつけて、遮る。
 「今の距離が丁度良いんだ。お互い欲しがる位が。
俺達が一緒に居たら…多分駄目だって、判るだろ?」
 「ん。そう言うと思ってた」
 もそもそと服を着る秋。その体を、背中から抱きし
める。
 「第一、子供と愛人の前で出来るほど、俺、鈍感じ
ゃねぇし」
 「…バカ…」
 この二人を南極に行かせない方がいいな。洪水にな
っても葡萄瓜は知らんし。
《コメント》
おお、珍しく大人しい侭終った。
最近の葡萄瓜は過激になりつつありましたが、
これは成功しましたね。
「薬屋」0巻のネタばれにも繋がりますので、
取り扱いご用心の程を。

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