うーん、いくら考えても思い付かない。
だってどう考えても違いすぎるんだ。あまりにも。
絵本の中に出てくる彼らと実際に僕のすぐそばにいる
彼らは似ても似つかない。
どうしてだろうか? 首をかしげて僕は大好きな絵本
をそっと閉じた。
この謎は僕が解決してみせるぞ。そう誓って。。。
3日前のこと。
その日の夕食のおかずは野菜炒め。
僕は大皿に山盛りの野菜炒めを慎重に自分の小皿へと
取り分けていた。こぼしちゃいけないっていう配慮と
そして少しイケナイ考えがあったから。
そんな僕に隣に座っている京介はぽそりと言った。
「ピーマンもちゃんと食べないとだめだよ。」って。
これってすごいよね。僕はいままで誰にもピーマンは
苦手だなんて言ったことないんだ。
それなのに京介には判ってしまうんだよ。
これって絶対に『魔法』だよね!そうに違いない!!
1週間前だって、いつも来るおばさんがたまたま用事
で来られなくなって京介がカレーライスを作ってくれ
たんだけど、いつもよりずっと多くご飯を炊いたんだ
よお。
「おなかを空かせた深春が来る気がするから。」って
でもさ、深春は旅行中であさってでないと帰ってこな
いのに。そしたら夜遅く突然深春が来たんだ。
「腹減って死にそうだ。飯ないか」と家に駆け込んで
きてカレーライス7杯食べたっけ。
そう、その深春もあやしいと僕は思う。
こないだ先生と京介は学校の用事で朝早くから出掛け
てしまい僕1人で家で留守番してたんだ。
1人でも全然平気なんだけど、なんか話相手がいない
のも少し退屈のような気もするなって思ったら深春が
遊びに来てくれた。しばらくバイトで忙しいって言っ
てたのにさ。
いや、一番怪しいのは先生だ。きっと魔法使いの親分
は先生だと思う。。
夕食の後、たまに何かもう少しつまみたいなと思う事
もあるけど、そういう時に先生は必ずお土産を買って
くる。それも僕の食べたいと思ったシュークリームや
チョコレートなんだ。
これは怪しいよな。僕は一言もアレが食べたいなんて
言わないのに。
絵本の中の魔法使いは黒いマントをたなびかせてたり
してるし、魔女はほうきに乗って空を飛ぶ。
今のところそういう行動はとってないみたい。
普通の振りをしないといけないのかもしれないし。
でも違うんだ。僕は知っているんだから。
魔法使いは普通の格好してこっそり魔法で願いをかな
えてくれるんだ!
いつか僕にも魔法を教えてくれるといいなあ〜
そしたら僕、京介や深春や先生の願いをかなえてあげ
よう。義理と人情が大切だって先生はよく言うしさ。
人に親切にしてもらったらお返ししなきゃ。
あーあ いつ魔法教えてくれるのかなあ?
その日が楽しみだ。
僕、絶対にいい魔法使いになるんだもん!!