「・・・蒼、これは何のつもりだ。」
とまどいを押さえたつもりだが声がとがっている。
部屋の中を見回したら又めまいがしてきた。
「ここ高かったんだからさ、さっさと楽しもうよ。」
笑顔で切り返されると怒っている自分が馬鹿らしくな
ってくるが、やはりここはきちんと意見をしないと。
蒼に呼び出された平日の昼間。
眠たいのにタクシーに押し込まれ、うとうとしている
間に着いたのがココ。
まるで中世のお城のような外観の建物の中は恋人同士
が楽しめる場所であり・・・
つまり、いわゆるラブホテルという所に連れ込まれた
訳である。
貝殻の形の大きなベッド
室内にある温水プールにはすべり台がついている。
狭いながらもサウナがあり、カラオケ完備。
「京介、怒ってるの?」
部屋の真ん中で立ちすくんでいる僕に後ろから蒼が抱
きついてくた。
「こないだ公園で話したこと覚えてる?」
公園で話したこと??
そう、それは先週のこと。
買い物帰りに通った小さな公園で男の子が2人仲良く
すべり台で遊んでいた。
それを見た蒼が僕に問いかけた。
『京介は小さい頃どんな遊びをしたの?』
僕はこう答えた。『あまり遊んだ記憶はない。』と。
「僕、あまり子供の頃遊んだ記憶ないし、もし良けれ
ば一緒に遊んで欲しいなと思って・・」
ああ そうか。まだまだ子供なんだ蒼は。
すべり台で遊びたいなんて全くもう。
「判ったよ。じゃあ遊ぼうか。」
蒼は2人分の水着まで用意してきた。
早速水着に着替えすべり台で遊ぶ。
プールに飛び込んで水をかけあい子供のような僕達。
「蒼、この水着小さくないか?」
うう、生地が節約してあるというか、あまりに身体に
密着した水着は水に濡れるとややきつい。
「じゃあ あがろう。」
プールの中の僕を引き上げる蒼。そして・・・
「あ、蒼、すべり台で遊ぶだけだろうが!」
「何言ってるの! 料金の中に入っているんだからさ
たっぷり楽しまないと。」
僕から水着を剥ぎ取りベッドに押し倒す蒼。
この状況はとてもまずい。。。
「ほ、ほら。そろそろ時間が」
「大丈夫。ここ平日午後はフリータイムだから。」
「で、でも」ええい なんとかしないとまた
「うるさい口はイラナイ。」噛みつくような荒々しい
くちづけ。蒼の舌が乱暴に僕の口中を蹂躙する。
結局、また抱かれてしまった。
子供だと思った蒼が十分に大人だったといやという程
思い知らされた。
「今度はどこに行こうか?」
ベッドの中でダウンしている僕の隣でまだまだ余裕の
蒼。なにやらホテルのガイドブックを手にしてご機嫌
な様子。
「これなんかいいな。和風で座敷牢みたい。」
何も言わずポカリと蒼の頭を一発たたく。
勘弁してほしい。少なくとも2〜3日は。。。